東京変貌〈潤日に迫る〉③(全6回)
億ションだらけの東京のマンションを、いったい誰が買っているのか。
私たち取材班は、不動産登記簿から所有者や取引の一端をたどってみた。
2012年以降に完成した東京のマンションのうち、不動産情報サイトで閲覧数が多い人気物件や、世間で話題になった高額物件の中から23棟をピックアップした。
それぞれの棟の上層階と中層階から、ランダムに計222戸の部屋の登記簿を調べた。
調査対象都心エリア(港区、千代田区、文京区、新宿区、渋谷区)で8棟82戸、湾岸エリア(中央区、江東区)で8棟70戸、JR山手線の外側(江東区、北区、江戸川区、練馬区、葛飾区、足立区)で7棟70戸
まず都心エリアのマンションの登記簿から見ていこう。

高さ330メートルを誇る日本一高層のマンション「麻布台ヒルズ森JPタワー」(中央)
最初に取り上げるのは、建物高さ日本一のタワーマンションである「麻布台ヒルズ森JPタワー」(港区)だ。
開業は2年前の2023年。東京タワーとほぼ同じ高さの330メートルを誇る。
最上階となる地上64階には、たった3戸しかない。
その中でも最も広い部屋は、床面積が1600平方メートルを超えていた。一般的な2LDKの部屋なら優に20戸も入るほどの広さだ。
この部屋には105億円の根抵当権が設定されていた。
つまり部屋の所有者は、105億円までなら、部屋を担保に何度でも借り入れや返済ができる。根抵当権の設定額からして、いかに高額な物件かが分かる。
そんな超VIPな部屋の所有者は、港区に住所のある合同会社となっていた。
この合同会社の法人登記を調べてみると、代表者は、ファッション通販サイトの創業者の名前だった。会社の目的は、資産の取得、所有、管理及び売買と経営コンサルティング業務とあった。
最上階の別の部屋(733平方メートル)も調べてみた。
所有者は、有名なアプリを開発した企業の創業者の名前だった。
登記簿の記載からは、0.3%の低金利で数十億円を超える金を借りていることもうかがえた。
最上階で一番狭い部屋でも、広さは500平方メートル弱あった。抵当権が設定されていないことから、銀行からの借り入れをせずに、キャッシュで一括購入しているようだ。
麻布台ヒルズの近くに事務所を構える不動産鑑定士に話を聞いたときに、こんな話をしていた。
「(最上階の)この部屋の分譲価格は200億円」
「1戸ずつ専用エレベーターがあり、車で自家駐車場に入ったら誰にも見られずに部屋に上がれる構造になっている」
「管理費だけで月50万円かかる」

麻生台ヒルズJPタワーの最上階で、最も広い部屋は1600平方メートルもある=東京都港区で
麻布台ヒルズの開発を手がけた大手デベロッパー「森ビル」(東京)の関係者は、「一般に公募はしておらず、これまで取引のある会社の経営者らに声をかけて販売した」と明かす。
麻布台ヒルズ森JPタワーでは、最上階に限らず上層階の部屋の所有者にも、有名な新興企業の創業者らが名を連ねていた。
都心エリアでは、麻布台ヒルズ森JPタワーのほかにも7棟のマンションを調べた。
都心のマンションで目立ったのは、英領バージン諸島を住所として登記している法人の多さだった。
カリブ海に浮かぶ英領バージン諸島は、法人税がかからず、タックスヘイブン(租税回避地)として知られている。タックスヘイブンは、富裕層や多国籍企業の節税対策となったり、マネーロンダリング(資金洗浄)に使われたりして世界的に問題となっている。
都心の高級マンションも、富裕層らの節税対策に使われているのだろうか。
登記簿に記された法人名から推測するに資産管理会社だと思われるが、ある金融業界の関係者は「タックスヘイブンがかむと、その先にどう...
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