東京都北区在住の石川和枝さん(96)が、熱戦が続く2024年パリ五輪をイメージしたパッチワーク作品を完成させた。21年の東京五輪に続いて、スポーツの祭典をテーマにした。今回は、2年以上続くロシアのウクライナ侵攻など戦争のニュースに心を痛め、平和への願いを込めて一針一針手縫いした。(細川暁子)
写真左:平和への願いを込めて、パリ五輪をイメージしたパッチワーク作品を作った石川和枝さん写真右:東京五輪前には、エンブレムをパッチワーク作品に仕上げた=いずれも東京都北区で
母から形見として遺された約100年前の絹の長じゅばんの布を素材に使用。一辺約2センチの六角形に裁断してから縫い合わせて背景をつくり、その上にエッフェル塔や五輪マーク、桜の花びら、日の丸を掲げた船などを布や糸で表現した。毎日2時間ずつ、3カ月にわたって制作に取り組んだという。
パッチワークを始めたのは60代。カルチャーセンターに通って覚え、03年には東京国際キルトフェスティバルのキルトコンテストで入選した。21年の東京五輪の際に制作した作品は、いつか東京で五輪が開催されることを願いながら、戦後間もなく46歳で亡くなった母への思いを託した。
3年後の五輪を迎えた今年、石川さんの創作意欲をかき立てたのは、平和への思いだった。ロシアによるウクライナ侵攻、パレスチナ自治区ガザで続く戦闘—。戦争のニュースを見るたびに現状を憂えたという。
原点にあるのは自身の体験。1945年3月10日の東京大空襲では、下町周辺が真っ赤に燃える光景を遠くから目撃した。その後、福島県に疎開した石川さんは「あんな恐ろしく悲しい思いは二度としたくない」と話す。
「終戦の8月15日が来るたびに、戦争のない平和な日を願ってきた。どの国の人もみんな仲良く、元気でいてほしいです」。自宅の玄関先に飾られている作品には、そんな願いが込められている。
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