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38年ぶり提出「空襲被害者救済法案」のゆくえは…何度廃案になっても成立を訴え続けた人々の思い

2026-07-15 HaiPress

参議院に提出された空襲被害者などの救済法案の行方が危ぶまれている。自民党など与党の賛同が得られず、野党8会派で提出したが、17日の会期末が迫っても審議入りのめどが立たない。対象になっていることが広く知られていない沖縄戦の関係者や、38年前までの空襲関連法案が提出された当時から成立を目指した人たちも、国会での充実した議論を待ち望んでいる。(森本智之、橋本誠)

◆救済法案は沖縄戦民間被害者も対象

「救済法の対象に沖縄戦の地上戦の被害者が含まれたことはぜひ多くの方に知ってほしい」。沖縄戦の民間被害者の救済を求めてきた弁護士の瑞慶山茂さん(83)は話す。

沖縄戦の民間被害について語る瑞慶山弁護士=千葉県松戸市で

国内で唯一の地上戦が行われ、約60万人の県民の4人に1人が亡くなったとされる沖縄戦。「空襲と同様、国は何の補償もせず、被害の調査すら行われてこなかった」。とはいえ、空襲とは形態の異なる沖縄戦の被害が対象になったのはどのような経緯からなのか。

瑞慶山さんは南洋・パラオで生まれ、沖縄で育った。戦争で姉を亡くした遺族でもある。2006年、友人の弁護士に誘われ、東京大空襲の被害者らが国に賠償を求めた訴訟の弁護団に加わった。その被害を学ぶ中で、沖縄戦についても調べ始めた。

◆裁判は敗訴したが、民間人のPTSDが初めて認定

沖縄戦の被害者もまた放置されていた。声を聞くため、千葉県内の事務所に加えて、沖縄にも事務所を開設し、無料で法律相談を始めた。「どうしてもっと早く来てくれなかったのか」「10年前なら生存者もたくさんいたのに」

戦争被害を経験した自分が問題に気づけなかった後悔の気持ちが背中を押す。南洋戦も含め約600人の声を聞き、自らが弁護団長となって、2012年に沖縄戦、2013年には南洋戦の国家賠償訴訟の提起にこぎつけた。並行して空襲被害者と連携し、救済法の実現を求めてきた。

裁判は敗訴したが、大きな成果も手にした。判決で戦争による民間人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)が初めて認定されたのだ。沖縄戦訴訟では原告79人のうち43人。「集団自決を生き延び、40年以上たってからフラッシュバックに悩まされるようになった」「死体を踏んだ感触や血のにおいがよみがえる」「戦争で亡くなった母が泣いている夢を見る」。不眠や悪夢、うつ症状など、こうした声は600人への相談から掘り起こした。

◆「お金の問題ではなく、人間の尊厳の問題」

当初は裁判で被害の認定を求めることを当の被害者が拒んだ。「原因が戦争にあるとは思いもせず、家族からも地域からも症状を理解されずに『おかしな人』と差別されてきた。これも沖縄戦の被害者の悲劇です」。説得し、裁判で主張するまで1年半を要した。認定を受けて初めて「自分の責任じゃない」と多くの被害者が安堵(あんど)したという。

空襲被害者救済法案を伊藤文靖参院事務総長(中央右)に提出する国民民主党の舟山康江氏(同左)ら=8日、国会で(木戸佑撮影)

今回の救済法では成立の可能性を高めるため対象者を、空襲や沖縄戦で心身に障害を負った人に限定している。南洋戦も対象外になった。ただ、ケロイドなどの身体障害に加え、心理的外傷や精神障害が対象となったのは、瑞慶山さんと沖縄戦や南洋戦の被害者らがPTSDの認定を勝ち取り、法制化の根拠となる「立法事実」になったからだ。

今回の法案提出に沖縄戦の被害者も「希望を持って待っている」という。「沖縄戦も空襲も、放置されてきた民間の戦争被害。国の起こした戦争によって自分や家族が傷ついたことを認めてほしいと願っている。お金の問題ではなく、人間の尊厳の問題。これが解決しなければ戦争は終わったことにならない」

◆「出せばすぐ通ると、みんな期待していました」

38年前まで提出されていた空襲関連法案は、野党が14回提出した戦時災害援護法案。名古屋空襲で左目を失った杉山千佐子さん=2016年に101歳で死去=らの全国戦災傷害者連絡会結成がきっかけだった。

2004年、国会を訪れ、議員に補償を訴えた杉山千佐子さん。法案提出が途切れても運動を続けた=東京都千代田区で

障害者や...

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