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秋葉原でトルコライス 『長崎トルコライス食堂』|ぐるり東京

2026-06-05 HaiPress

イラスト:なかむらるみ

サブカルチャーの街・アキバで、“大人のお子様ランチ”

JR秋葉原駅電気街口からすぐに立つ「秋葉原ラジオ会館」。

JR線が十字型に交差する秋葉原駅の電気街南口に出ると、ラジオ会館の鮮やかな黄色(字は赤と青)の電光看板が目に入る。いまどきこのビルが何故ラジオ会館というのか、アキバを訪れる若い人のほとんどはわかっていないのだろうが、ひと昔前まではラジオや無線機器の部品を売る店が収容されていた建物だったのだ。

開業は昭和25年(1950年)。終戦直後から駅前に広がっていたヤミ市の露店(ここはとくに電熱器を筆頭とする生活家電がよく売れた)を収容したものだったが、翌年の51年が民放ラジオ開局ラッシュの年だから、ラジオという言葉自体にもトレンド感があったのだろう。

そんなラジオ会館、探訪してみると、もはや館内にラジオ部品関係の店はまるでない。各フロアーで圧倒的に目につくのは、アニメ系アイドルのフィギュアとカードゲームの関係の店舗だが、その世界にうといオッサンの目にはどこも似たようなフロアーに見える。ゴジラなどの怪獣系の精密フィギュアを並べた海洋堂の店には、いかにも欧米からやってきました……って感じのオタクな外国人客が溜まって、眼力を入れてショーケースの商品を見物していた。ポケモンや遊戯王のカードをずらりと展示した店もあったが、100円台のものから80万円くらいのものまでがごくあたりまえに並べ売りされている。高いやつには、「見本」と但したスランプが押されていたけれど、眺めながらちょっと胸がドキドキした。お客の少年たちが卓に向かい合ってカードゲームをやりあうコーナーもあって、一見すると、昭和の下町の囲碁や将棋の差し場のようでもあり、妙な懐かしさが感じられた。

「長崎トルコライス食堂」が入居する、食のテーマパーク「CHABARA(ちゃばら)」。日本各地の名産品を豊富に扱う。

ラジオ会館の地階にもビアホール銀座ライオンが入っていたが、最近の秋葉原は食のスポットも多い。ネット検索していて目にとまったのが、「長崎トルコライス食堂」という店だ。

看板商品の「スペシャルNAGASAKIトルコライス」(単品1600円)。あご出汁のみそ汁付き。

長崎のローカルフードとして知られるトルコライス、僕は以前本場長崎で取材を兼ねて食べたことがある。トンカツ、ピラフ、スパゲティー(ナポリタン)の3品によって構成された“ニッポン洋食”で、ピラフとスパゲティーの間に配されたカツがアジアとヨーロッパの中継地・トルコを表わすとか、長崎の「トルコ」って店が始めたとか、名の由来は諸説あるようだが、味のバランスは悪くなかった。個人的イメージだが、オタク的秋葉原人というのは、こういうわかりやすい洋食盛りを好みそうな気がする。

しかし、どうして秋葉原に長崎ローカルフードの店を作ったのだろう……と思いつつ行ってみると、JR高架下(山手線ホーム北端あたり)のそのブロックは各県の物産コーナーになっていて、なかの長崎県がこの食堂を出店しているのだった。

1番人気だという「スペシャルNAGASAKIトルコライス」はトンカツ、スパゲティー、ピラフ(ここはカレー味のいわゆるカレーピラフ)の御三家にハンバーグとエビフライがプラスされた豪華なもの。長崎産のアジフライがドカッと盛られたシーフードトルコライスというのもいただいたが、この店はトルコライスを看板にして長崎の特産物がいくつも揃えられている。豚の角煮を使った角煮まん、角煮めし(台湾ちまき風)、そしてハトシ。

「長崎県産アジフライのシーフードトルコライス」(単品1450円)。大きなアジフライをはじめ、エビフライ、カキフライなどが盛られた逸品。

ハトシ、という呼び名は知らなかったが、これはエビのスリ身を挟んだパン(食パンを小さな四角に切り分けた)を油でジュッと揚げたもので、長崎の居酒屋か露店で味わった覚えがある。

「中国語でエビをハー、トシはトーストの意味なんですよ。長崎の昔からの名物です」

店長の杉本さんから伺った。福岡の出身で長崎にも何年か暮らしたという店長、見た目はおとなしそうな感じの人だが、長崎名物の話になると饒舌だ。地元愛のようなものがひしひしと伝わってきた。

◆◆◆

今回訪れたお店

長崎トルコライス食堂

住所東京都千代田区神田練塀町8-2


電話03-6206-9223


営業時間11:30~20:00


定休日無休

※掲載したお店や施設の臨時休業および年末年始・ゴールデンウイーク・お盆休みは営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。


※2026年6月5日時点での情報です。


※料金は原則的に税込み金額表示です。

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PROFILE

泉麻人コラムニスト

1956年東京生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、編集者を経てコラムニストとして活動。東京に関する著作を多く著わす。近著に『「冗談画報」という楽しい番組があった』(三賢社) 『黄金の1980年代コラム』(三賢社)『夏の迷い子』(中央公論新社)、『大東京23区散歩』(講談社)、『東京 いつもの喫茶店』(平凡社)、『1964 前の東京オリンピックのころを回想してみた。』(三賢社)、『冗談音楽の怪人・三木鶏郎』(新潮新書)、『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などがある。『大東京のらりくらりバス遊覧』の続編単行本が2021年2月下旬、東京新聞より発売された。


なかむらるみイラストレーター

1980年東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒。著書に、月刊たくさんのふしぎ『かっこいいピンクをさがしに』(福音館書店)、『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)がある。泉さんの本では『東京ふつうの喫茶店』『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京 のらりくらりバス遊覧』『続・大東京 のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などでイラストを担当している。


https://www.tsumamu.net/


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