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駿河台で葱だく肉玉炒飯 『新御茶ノ水 萬龍』

2026-01-16 HaiPress

イラスト:なかむらるみ

背徳感マシマシ! 葱たっぷり、肉ジューシー、玉子フワフワ炒飯

太田姫稲荷にゆかりのあるムクの木。昭和6年(1931年)にJR御茶ノ水駅総武線拡張の際に駿河台に遷座したため、この場所に置かれているという。

御茶ノ水駅の聖橋口に出ると、秋葉原側の橋の際にひょろっとした老木が見える。「元宮」という札がかかったこのムクの木は、かつてここにあった太田姫神社の跡を表す神木(神社は駿河台下の方に移転)らしいが、これを横目に坂(明大通り)をちょっと下ると、右手に大きなドーム屋根のニコライ堂がある。皇居の二重橋や東京タワー、上野の西郷像……なんかと並ぶ東京の大御所名所の1つといってもいいだろうが、ロシア正教を伝導する聖ニコライによって、ジョサイア・コンドルが設計を指揮したこの聖堂ができあがったのは日露戦争前の明治24年なのだ。大正の震災で壊れた後に多少改修されたというけれど、いつ見ても“絵ハガキ”を眺めているような気分になる、浮世離れした建物だ。

道を渡った神田淡路町側の裏道に、洋のニコライ堂と対するように趣のある日本建築が残されている。石垣の上に白壁と木材の調和の取れた塀、黒瓦を載せた家屋がきちんと置かれた、模型みたいな日本屋敷。門前に解説板の類はないけれど、行政資料によると、高畠家住宅というものらしい。昭和2年頃の建築で、当初は伊勢丹を立ちあげた初代の小菅丹治氏が隠居していた……なんていう説もネットに散見される。なるほど、伊勢丹は新宿のイメージが強いけれど、創業地はここから1キロも離れていない昌平橋の向こうの神田旅籠(はたご)町だから、信憑性はある。

「ニコライ堂」の通称で知られる「東京復活大聖堂」。拝観時間は夏季(4~9月)13~16時、冬季(10~3月)13時~15時30分。

ところで、この「高畠家住宅」の坂下側の隣の名倉クリニックは、千住に本院のある接骨医の名門・名倉だ。いまはタワービルになっているけれど、ここもほんのひと頃まで、年季の入った小学校みたいなコンクリ建築の病棟だったはずだ。

表通り(明大通り)に出て、坂をちょっと下ると、道のセンターラインに「駿河台」の表示板が立つあたりに訪ねる店、中華料理の「新御茶ノ水 萬龍」がある。横長の黄色い幌看板の下に白いノレンが提(さ)がり、裏通りの町中華という風情だが、見上げればけっこう高層のビルの1階の路面店舗なのだった。今回お目当てにしてきた看板メニューは「肉玉炒飯」。

こぼれんばかりにネギを盛った「葱だく肉玉炒飯」(肉玉炒飯1150円+葱だく150円)

肉玉とは……豚のバラ肉炒めと炒(い)り玉子をチャーハン上に盛ったて焼売を2個つけた、というものなのだが、豚バラ肉になじませたチャーシューのタレの味が効いている。そして、ナルト片なども見受けられるニッポンのヤキメシ系のチャーハンもうまい。

酒を飲む夜客のつまみとしても人気のチャーシューエッグもいただいたが、チャーシューと半熟の目玉焼きのハーモニーが実によろしい。これは豚肩ロースと豚バラの2種の肉と専用のタレによって醸し出されるものらしい。脂っこい味を緩和するように、皿の一角に刻みネギが盛りつけられているのだが、このネギをどっさりと肉玉の上に降りかけた「葱(ネギ)だく肉玉炒飯」なるオプションメニューが用意されているのに気づいて、こちらも注文することにした。

「チャーシューエッグ」(850円)。写真はミニサイズの「ジャストサイズ」(500円)

当初、葱だく……というほどの刻みネギは邪魔なのではないか? とも危惧していたのだが、これが豚バラの脂身やチャーシューソース、チャーハンと混合した風味はただの「肉玉炒飯」とはかなり違ったものになっている。このネギのシャキシャキした食感もクセになりそうだ。

ちなみに、看板メニューの肉玉炒飯は、この店が開業まもなくコロナウイルス騒ぎによる不況に見舞われた折、わざわざ来てくれるお客さんへのサービスの意をこめて考案されたものらしい。

コロナ禍を契機に生まれた看板メニューのエピソードを、そういえばこの取材をやっていて何度か耳にした。あの奇禍はマイナスの要素ばかりではなかったのだ。

◆◆◆

今回訪れたお店

新御茶ノ水 萬龍

住所東京都千代田区神田駿河台3-2-6 御茶ノ水ビル A.PLAZA 1F


電話03-5207-5678


営業時間11:00~15:00、17:00〜22:00(土曜、祝日~21:00)


定休日日曜

※掲載したお店や施設の臨時休業および年末年始・ゴールデンウイーク・お盆休みは営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。


※2026年1月16日時点での情報です。


※料金は原則的に税込み金額表示です。

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PROFILE

泉麻人コラムニスト

1956年東京生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、編集者を経てコラムニストとして活動。東京に関する著作を多く著わす。近著に『「冗談画報」という楽しい番組があった』(三賢社) 『黄金の1980年代コラム』(三賢社)『夏の迷い子』(中央公論新社)、『大東京23区散歩』(講談社)、『東京 いつもの喫茶店』(平凡社)、『1964 前の東京オリンピックのころを回想してみた。』(三賢社)、『冗談音楽の怪人・三木鶏郎』(新潮新書)、『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などがある。『大東京のらりくらりバス遊覧』の続編単行本が2021年2月下旬、東京新聞より発売された。


なかむらるみイラストレーター

1980年東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒。著書に、月刊たくさんのふしぎ『かっこいいピンクをさがしに』(福音館書店)、『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)がある。泉さんの本では『東京ふつうの喫茶店』『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京 のらりくらりバス遊覧』『続・大東京 のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などでイラストを担当している。


https://www.tsumamu.net/


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