宮内庁が4月にインスタグラムの公式アカウントを公開して半年余り。天皇、皇后両陛下の公務の様子を中心に、時にはオフショットも投稿し、フォロワー数は180万人超(11月7日時点)と人気を集めている。発信の裏側を取材し、見えた現状と課題は──。
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赤坂御苑(港区元赤坂)で秋の園遊会が開かれた10月30日夜、モーニングと紅葉柄の訪問着で正装された両陛下の写真が投稿された。招待されたパリ五輪、パラリンピックの金メダリストらと談笑する様子などもアップされ、21.9万件(11月7日時点)の「いいね!」が送られた。
パリパラリンピック車いすテニス女子ダブルスで金メダルを獲得した上地結衣選手、田中愛美選手と話す天皇、皇后両陛下(宮内庁のインスタグラムから)
このほか、振る舞われたオードブルやプチケーキ、今回から提供が再開された名物・ジンギスカンや焼き鳥の写真も注目を集めた。
人物写真を撮っているのは、コニカミノルタ(千代田区)に所属する宮内庁嘱託のカメラマン。同社はカメラ事業から撤退しているが、前身時代の1947年から撮影を担っている。
その1人、平井亮(まこと)さん(51)は自身の役割について「記録を写真で残すこと。誰が来て、どこで撮影したかが分かる写真が求められる」と説明。広角、望遠の各レンズを取り付けたカメラで、各地の撮影に臨んでいる。
インスタは、アプリのホーム画面で正方形の写真が表示されるため、従来とは異なるカットも要望されるようになったが、「こんな注文が来るかな」と予想しながら撮っているという。
撮影時の心境などについて話すコニカミノルタの平井亮さん=千代田区で(池田まみ撮影)
警備の都合などで撮影のタイミングが制限され、「一瞬を逃せないというプレッシャーは感じる」と話す一方、嘱託カメラマンの同僚同士で会場の明るさなどを共有し、感度の調整に役立てることも。一般の立ち入りができない場所で撮影することには「『自分はこんなところで撮っているんだ』と思う」とほほ笑む。
宮内庁のインスタは、特に若い世代に皇室に関心を持ってもらう狙いで開設された。運営は宮内庁広報室の職員が担当し、これまでの投稿は動画やスライドショーを含めて約150件。両陛下と愛子さまが5月に御料牧場(栃木県)でタケノコ掘りを楽しむ様子には69.2万件(11月7日時点)の「いいね!」が集まった。天皇陛下が自ら撮影した皇后さまや愛子さまの写真もアップされている。
馬をなでる愛子さま。撮影は天皇陛下=栃木県内で(宮内庁のインスタグラムから)
宮内庁は来年度予算の概算要求で、現在10人体制の広報室の3人増員を求めており、情報発信を強化していく方針。現在は各宮家に関する投稿はほぼないが、その発信も検討している。
英国では王室のほか皇太子夫妻らが個別のアカウントを設け、コメント欄も活用している。海外の王室事情に詳しい関東学院大の君塚直隆教授は、皇族数の減少が課題になる中、「天皇、皇后両陛下だけでなく皇族全体でどんな活動をしているのかを国民に知らせることが重要」と語り、アカウント名を「宮内庁」ではなく「皇室」とすべきだと指摘する。
また、宮内庁がインスタのコメント欄を活用せず、同庁のホームページで意見を募っていることについて、「利用者はコメント欄で見たい写真や映像を言ってくれる。相互作用がなければいけない」と述べた。
◆文・山口登史
◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。
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