武将らの背後に妖怪が迫る「源頼光公館土蜘作妖怪図」=いずれも渋谷区で
人間に襲いかかろうとする不気味な妖怪や、恨みを晴らそうと恐ろしい形相でにらみ付ける幽霊-。浮世絵に登場するさまざまなお化けの姿に、背筋がぞくっとした。
太田記念美術館(渋谷区)で開催中の展覧会「浮世絵お化け屋敷」。化け物たちがずらっと並び、まるで怪談の世界に入り込んでしまったみたい。
「源頼光公館土蜘作妖怪図(みなもとのよりみつこうのやかたつちぐもようかいをなすず)」(歌川国芳、1842~43年)は、病床に伏した武将源頼光らの背後に、巨大なツチグモが控える。作品を埋め尽くす無数の魑魅魍魎(ちみもうりょう)は、制作当時の天保の改革で厳しく取り締まられた庶民の暮らしを暗示しているとされ、酷政を行う為政者たちを風刺したとも言われる作品だ。化け物より怖い物とは何かと、考えさせられる。
妖怪や幽霊の浮世絵が並ぶ会場
かわいくユーモラスな妖怪も。楽しそうに踊る猫又や、人間のように相撲を取るかっぱ、大名行列ごっこをするキツネに思わず吹き出した。鬼などの妖怪を武士が退治する構図も多く、現代でいう「ヒーローもの」が、当時も親しまれていたことがうかがえる。
開館前から行列ができる人気ぶりで、家族連れや外国人観光客の姿も。日野原健司・主席学芸員(49)は「浮世絵は庶民による庶民のための娯楽メディア。化け物や妖怪は不気味さやかわいさだけでなく、世相を風刺していることも。深く知り、楽しんで」。国芳や月岡芳年の名作をはじめ、計174点を前後期で展示する。(中村真暁)
<太田記念美術館>旧東邦生命保険元社長の太田清蔵氏の浮世絵コレクションを公開するため、1980年に開館。約1万5000点を所蔵する。「お化け屋敷展」は9月29日まで。同6日からは全展示を入れ替える。月曜(祝日の場合は翌日)と同2~5日に休館。
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